Posted: 15 Nov. 2021
Update: 10 Feb. 2024
深度合成写真を得るためには,ピントを微小に変化させながら連続して写真を撮影する必要があります.カメラ本体にフォーカスシフト撮影機能がある場合はカメラとレンズのみで撮影可能です.また,カメラ本体ではフォーカスシフト撮影ができなくても,テザーソフトであるdigiCamControlのフォーカスシフト撮影機能を使用することでも可能です.
ただし,フォーカスシフト撮影はオートフォーカスを利用するため,レンズには「そのカメラでオートフォーカスが作動すること」という制約があります.
オートフォーカス可能なマクロレンズの撮影倍率は最大でも等倍程度までなので,これを越えた倍率を得るためには電子接点を持つ接写リングを使用するなどの方法がありますが,オートフォーカス可能なマクロレンズ自体選択肢がかなり限られます.
ピントを微小に変化させながら連続して写真を撮影するためには,必ずしもフォーカスシフト方式である必要はなく,カメラ自体を連続的に微動させることでも可能です.フォーカシングレールのような機材を使用し,手動で微動させながら連続撮影することも可能ですが,これを自動的に行うことができる機材(自動微動撮影システム)も存在しています.
自動微動撮影システムとしては,StackShot Macro RailやWeMacro rail,Castel-Microなどがよく知られています.自動微動撮影システムにはレンズの制約がありません.そのため,ベローズを使用したり,カメラ用ではないレンズを使用したりと,撮影の自由度が格段に向上します.
今回はWeMacro railを導入し,撮影を自動化してみました.
WeMacroには微動装置本体以外にもいくつかのオプションがあります.今回は垂直スタンドや微動ステージ等も併せて導入しています.これらを組み立ててカメラをセットすると次のようになります.
WeMacroはPCにUSB接続し,専用ソフトから制御します.スマートフォンからも制御できるようですが,私の場合は後述のマクロ化の兼ね合いもあり,PCからのみ使用しています.
WeMacro導入にあたり,オートフォーカスの制約がなくなったので,ニコンのベローズPB-5や引き伸しレンズも併せて導入しています..
まずPB-5で倍率を調整し,NEEWERのレールスライダーでベローズごと微動させピントを合わせる,その後WeMacroを作動させる,という流れです.WeMacro RailとPB-5の間にレールスライダーをかませることで,ピント調整が非常にやりやすくなります.また,WeMacro Railは垂直スタンドに固定されているため,レールスライダーを使用することでWeMacroの可動範囲を上下にシフトさせることもできます.
標本固定部はxy方向に移動可能なステージにペフを固定し,標本針を刺しやすくしています.また,ステージごと自由雲台に固定しており,微妙な傾きや回転を調整できるようにしています.
WeMacroの動作はPCから制御可能です.Nikon Z6はテザーでも使用可能なので,PCから微動→撮影のサイクルを自動化することができます.
Nikon Z6のテザー撮影にはdigiCamControlを使用してきましたが,ニコンから無料のテザーソフト「NX Tether」が公開されたので,これを活用することにしました.
NX Tetherはライブビューは確認できませんが,シャッターボタンを押す,撮影画像を自動的にPCに転送するなどの基本的な機能は備えています.digiCamControlでは動作不安定なときもありましたが,NX Tetherはニコン純正であるためか,今のところ動作は安定しています.
UPDATE 10 Feb. 2024
NX TetherがVer.2.0.0でライブビュー表示に対応しました.
digiCamControlではHiMacroExを活用して動作をマクロ化していましたが,今回はWeMacroとNX Tetherの動作をマクロ化してみました.
HiMacroExでは以下の動作をマクロ化しています.
NX Tetherで撮影を行うと自動的に画像ビューワを立ち上げることができます.マクロをスタートさせると画像ビューワに自動的に撮影画像が表示され続けるので,スタート後は好きなところでストップさせるだけです.
NX Tetherはショートカットキーを割り付けることができるので「撮影ボタン」に「spaceキー」を割り当てています.WeMacroはショートカットキー割り当てができないので,ソフトをフルスクリーン表示させたうえで画面の指定座標をクリックさせるようにしています.フルスクリーン表示させるのは,クリック座標を常に同じ位置にするためです.なお,Step Forwardボタンはバックグラウンドクリックさせています.アクティブ(前面表示)にしてからクリックさせると,その間は撮影画像が見えなくなってしまうからです.
NX Tetherは「常に最前面に表示する」ことはできるのですが,常にアクティブではない,という点がやっかいです.NX Tetherは撮影後に指定ビューワで撮影画像を開くことができますが,ビューワで画像が開くとアクティブウィンドウはビューワ側に移動するからです.
HiMacroExは「ウィンドウをアクティブにする」こともできるので「NX Tetherで撮影する」の直前にNX Tetherをアクティブにするコマンドを入れています.NX Tether自体にビューワ機能があればこんなややこしいことにはならないのですが,一度組んでしまえば後はノーストレスです.
なお,この方法ではWeMacroのシャッターケーブルは必要ないので,もしカメラを交換しても同じように使用することができます(ただしカメラはテザーに対応している必要あり).
UPDATE 18 Sept. 2023
WeMacroにカメラを取り付けて微動させる場合,レンズの繰出量が大きいとき(高倍率の場合)は微ブレの危険があります.この場合は,上記のセッティングを逆にして,カメラは固定し標本側を微動させる方が安全です.
この場合,HiMacroExによる動作は「Step Forward」だと撮影方向が逆になります.「Step Backward」にしておけばカメラ側を微動させる場合と同じ動作になります.