Posted: 17 Mar. 2020
写真撮影の際,レンズの絞りを絞ることで被写界深度を深くすることができます.標本撮影のようなマクロ領域においては,被写界深度は非常に浅くなるため,絞り値をある程度大きくとらなければ標本の全体像がよく確認できません.
しかし,絞り値を大きくすると,被写界深度が深くなる一方で,「回折」の影響により画像の鮮明さは徐々に失われます.これを「小絞りボケ」といいます.
回折現象の模式図を以下に示します.
絞りを通過した光は回折により一部は直進せず絞りの裏側に回り込みます.絞りの裏側に回り込んだ光の影響により写真の鮮明さが失われるのです.
このため,デジタルカメラの場合だと,1画素の面積が小さければ小さいほど,回り込んだ光の影響が強くなります.例えば35mmフルサイズカメラの場合,3000万画素のセンサーの方が2000万画素のセンサーよりも小絞りボケが出やすくなります.
同条件下で,絞り値のみ変化させた場合の実際の画像を次に示します.
絞り値を大きくするほど,ピントの合っている範囲が広い(被写界深度が深い)ことが分かります.一方で,画像の鮮明さが失われていることも確認できます.
当サイトで公開している標本写真の撮影には,画質低下を避けるため,概ねF8からF11で撮影しています.
しかし,F8から11程度では標本全体にピントを合わせることはできないため,「深度合成」(Focus stacking)により,鮮明さを失わないまま全体にピントが合った写真を作成しています.