Posted: 20 Mar. 2020
深度合成(Focus stacking)を実行するためには専用のソフトウェアが必要です.ここではフリーの深度合成ソフトとして広く用いられている「CombineZP」の使用方法を説明します.
CombineZPでの深度合成を始める前に,あらかじめ画像を用意しておく必要があります.ひとつの標本に対してピントを移動させながら撮影した数十枚の写真をひとつのフォルダに保存しておきます.このとき,フォルダ名を含むフルパスに日本語を含まないようにします.
フォルダ内の画像の名称にも日本語を含まないようにします.かつ,画像は必ずピント順に並ぶように名前をつけます.ピントが一番手前(または一番奥)に来ている写真から順に「fig001」「fig002」・・・のようにします.デジタルカメラで撮影した場合は撮影順に自動的に名前がつきますので,ピントを移動させながら撮影した写真を名前を変えずにひとつのフォルダに入れれば問題ありません.
次にフォルダに入れた写真の最初と最後の写真をよく確認します.最初と最後の写真がそれぞれピントの端と端になっている必要があります.標本のどこにもピントが合っていない写真はこの時点で削除しておきます.
これで準備完了です.
CombineZPを起動させ,メニューバーから「NEW」ボタンを押して,画像ファイルを選択します.
あらかじめ一つのフォルダ内にまとめておいた画像をすべて選択します.すると小窓が現れ,順に画像が取り込まれていきます.
画像の取り込みが完了すると,最初の画像が表示されます.
次に,取り込んだ写真の位置や倍率を補正するために,メニューから「Align and Balance Used Frames(Quick)」を選択し,実行(GO)します.
すると小窓が現れ,順に補正されていきます.
ちなみに,補正の選択肢には「Align and Balance Used Frames(Quick)」と「Align and Balance Used Frames(Thorough)」があります.
「Quick」と「Thorough」の違いは,回転方向(角度)の補正をするかしないかです.「Thorough」では回転方向の補正も実行するため,Quickに比べ処理に大幅に時間がかかります.撮影の際,前後方向にしかピントを移動させていない場合は,「Quick」で問題ありません.
Align and Balance Used Framesが完了すれば,深度合成を実行します.深度合成の手法には次の種類があります.
いずれかを選択して実行(GO)すれば,深度合成処理が開始されます.
どの手法で最も良い結果が得られるかは,状況により異なります.メニューバーから「All Methods」を選択すると,すべての手法を実行します(ただし非常に時間がかかります).
処理が完了すると,処理後の画像が表示されます.
この時点で画像フォルダの中に「output」というフォルダが自動的に作成されていて,合成結果の画像(Jpeg)が作成されています.あらためて画像形式や画質(Jpegの場合)を指定したい場合は,メニューバーの「SAVE」ボタンを押すとそれらの指定が可能です.
「All Methods」で複数の合成結果がある場合は,「Choose Frame to View」ボタンから処理結果を選択することができます.
各手法で処理した結果を次に示します.各手法の違いを分かりやすくするため,outputフォルダに自動生成されたJpeg画像を拡大表示しています.
※標本の撮影条件によって処理結果は大きく異なる可能性があることに注意してください.
特に背景と標本の縁のにじみ(ハロ)の出方に大きな差があります.私の場合は主に「Pyramid Do Stack」を使用しています.
メニューバーの「Enable Menu」ボタンを押すと,細かいメニューの使用が可能となります.
CombineZPはメモリー使用量が非常に大きくなります.File>Set Optionsでメモリ―使用量を管理することができます.最近のPCでは搭載メモリーが4GB以上であることが多いですが,CombineZPは32bitソフトなので,4GB以上を指定してもあまり意味はないと思われます.搭載メモリ―が小さかった時代だと,CombineZPにどこまでメモリ―を使用させるかを指定する意味がありましたが,十分なメモリ―がある場合は,あえて指定しない=「0」を指定,でよいと考えられます.
CombineZPによる合成結果は,合成前の1枚1枚の写真より「やや硬い」印象を受けることがあります.この場合はCombineZPのFAQにもあるように,パラメータを調整することで改善することができます.
Macro>Edit>Macrosを選択します.
例えば「Do Stack」を選択すると,マクロ一覧が表示されます.
この中の「Create Highpass Filter」を選択し,「Edit/Copy」を押すことでValueの調整が可能です.デフォルトでは「1000,750」ですが,後ろの数値を大きくすると「やわらかく」することができます.1000,1000にすると,シャープネス処理はかかりません.