Posted: 2 Oct. 2021
ベローズや接写リング(中間リング)を使用し繰出し量を長くとると,撮影倍率を上げることができます.どの倍率のときにどの程度の繰出し量やワーキングディスタンスになるかは「レンズの公式」を用いることで簡易的に計算することができます.
レンズの公式は次のように表されます.
fはレンズの焦点距離です.A,Bは下図の距離です.なお,撮影倍率は「B/A」で計算できます.
接写リングDG-Zを72mm分使用し,Nikon EL-Nikkor 80mm f5.6Nを取り付けて,実際に定規を撮影してみました.
定規が42mm写っているので,撮影倍率は36/42=約0.85倍と計算できます.
これをレンズの公式に当てはめてみます.
撮影倍率は0.85なので,B=0.85Aとなります.上図の繰出し量x=72mmなのでレンズの公式からB=148mmとなります.これよりレンズ長は計算上約30mmと求まります.EL-Nikkor 80mm f5.6Nの全長は38.5mmなので,レンズ長30mmは違和感のない長さです.
実際のレンズ構造は非常に複雑ですが,EL-Nikkor 80mm f5.6Nをリバースで使用する場合はレンズ長を30mmとすれば繰出し量やワーキングディスタンスが計算できそうです.
例えば,EL-Nikkor 80mm f5.6Nをリバースで使用して,倍率5倍で撮影したい場合は,繰出し量x=405mmと計算できます.これはPB-5では繰出し不可能な長さです.
EL-Nikkor 50mm f2.8Nをリバースで使用し,倍率5倍で撮影したい場合は,繰出し量x=236mmと計算できます.このことから,レンズの焦点距離が短くなると,同倍率でも繰出し量が短くなり,高倍率撮影がやりやすいことがわかります.
PB-5の最大繰出し量は185mmなので,逆にEL-Nikkor 80mm f5.6N使用時の最大繰出し時の撮影倍率を計算すると,約2.2倍となります.
なお,Aが大きければ大きいほどワーキングディスタンスが長くなります.撮影倍率が同じである場合,Bが大きい(繰出し量が大きい)ほど,ワーキングディスタンスは長くとれることになります.
つまり,EL-Nikkor 80mm f5.6NとEL-Nikkor 50mm f2.8Nで同倍率撮影する場合,ワーキングディスタンスはEL-Nikkor 80mm f5.6Nの方が長くとれます.
焦点距離と倍率を入力し「計算」を押すことで,AとBの長さを求めることができます.
焦点距離:mm 倍率:倍
A:
B: